 | 少し仕事をした後、山手線に乗る。気分はリルケの『マルテの手記』と言いたいところだがそれは自己陶酔に過ぎない。大晦日の山手線はいつもと違う。みな戦闘服であるスーツを脱ぎ捨て、柔らかい暖かそうなお気に入りの衣料で身を包み、ほっこりとしている。まるでマルテの好きな図書館の中にいるようだ。そのままクルクルと山手線を廻っていたい気を抑えながら鶯谷でおり、上野に向う。谷口吉郎、前川国男、ル・コルビュジェを横目でみやりながら閑散とした上野公園を抜ける。西郷さんの前にはアジア系の人々が皆そこそこきれいな格好をして集まっている。木陰でインドかパキスタンらしき女性がカレーを振る舞っている。ニッポンで年を越す外国人はやはりここに集まるのだろう。ニッポンで年を越す関西人が集まっていないことを祈りながらそこをすり抜ける。目指すはアメヤ横町。日が暮れるにしたがってどんどん人の群れは膨らむ。
連れ合いも実家に帰ってしまい、毎年一人で過ごす年末はその人混みの中に身をゆだねる。自分はそこでただのニッポン人であることを実感するのを楽しみにしている。
何時間かそこをうろうろする。来年の現場用の靴を買おうかどうか相当まよう。今年は人にもらったナイキのマダーを履いて五つの現場を廻った。あれはなかなか良かった。しかし自分で買うとなるとしぶる。あっバブアーからカバンがでてる。京都に小旅行するときにはよさそうだな…。ハリスツイードも様々な商品が出ている。ディッキーズのつなぎも欲しいな…。実験着みたいなカバーオールもかっこいいなー…。コレ着て仕事するとスタッフはひくだろうな…。と昔「さわやかポパイ少年」であった気持ちがうずく。
が、それらはすべてシュミレーション。大山という肉屋の店先でワンカップ大関と焼鳥と塩辛いもつ煮を食って上野を後にした。 恵比寿に帰って来ると街が灯火管制を受けたかのように暗い。大丸ピーコックで切り餅や玉子、豆腐、ちくわ、納豆そして黒松剣菱を一升買い込んで家路につく。
大菅編集長の影響ではないが、今晩は「吉田対ホイス」「曙対サップ」が楽しみだ。 では、よき御年越しを。 |
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